海外長期滞在のときに海外転出届を出すべきか?その役割と効果とは

海外長期滞在のときに海外転出届を出すべきか?その役割と効果とは

ワーキングホリデーや海外放浪、海外転勤などで海外に長期滞在する場合に気になるのが、日本に居ない間の税金関連などの日本国民としての義務のための諸手続きをどうするかという問題。

具体的に上げるとすると、住民税、国民健康保険、国民年金などが主なところになりますが、海外転出届を出すことでそれらの義務がどう変わってくるのかについて書いていきます。

 

出したほうが損か得かという観点でい結論を言うと、全国民に共通する明確な回答を出すことは出来ません。

何故ならばそれぞれの収入や年齢、出国時期、扶養家族の有無、住んでいる地域、などによって、海外転出届けを出すことで効果が変わってきますし、法規制もコロコロ変わるためです。

 

しかしおおよその考え方を知っていれば、あとは個別の場合に当てはめるだけで済みますし、実際の手続きの際にも事前に準備しておくことが出来ます。

 

まずは概要を把握するための参考にしていただければと思います。

 



海外転出届とは

海外に行くに当たり「住民票を抜く」ための行為を海外転出と言い、そのために役所に提出する書類を「海外点転出届」と言います。

海外転出届は住んでいる地区の役所にある住民登録窓口にパスポートを持参し移動届に記入するだけですが、届を出すと住民登録がなくなり住民票が取得できなくなります

 

海外点転出届は最寄りの役所で手に入れることができます。

海外転出届の提出については法的に細かな規定がされていないため、役所によって対応が異なりますが、1年以上海外に滞在する場合が目安となっています。

 

同じような書類として「在留届」というものがあります。

こちらは、3ケ月以上海外に滞在する場合、滞在している国の最寄りの日本大使館・領事館に在留届を提出する必要があります。

届け出は郵送、ファックス、インターネットでも可能。届け出ない場合は各種証明書などの発行が行なわれません。

届け出用紙は在外公館窓口または日本のパスポート発行窓口、またはインターネットから入手が可能です。

 


海外転出届を出すメリット・デメリット

海外転出届を出すことのメリットとデメリットを書いていきます。

住民税の支払い義務がなくなる(住民税)

住民税は1月1日に日本に居住している人がその年分支払う必要がある税金です。

ですので極端な話12月31日に出国してしまえば、1月1日には日本に居ないことになりますので、翌年の住民税は負担しなくても良くなるということです。

これが2日ずれて1月2日に出国することになるだけで、その年の住民税を1年分支払う必要が出てくるということです。

 

また住民税は前年度の収入を元に課税額が決定します。(1年遅れで徴収されるイメージです)ですので、現在海外に行っているなどで収入がなくても、前年度の収入が多買った場合はお構いなしに徴収されてしまうのです。

 

つまり住民税は1月1日に日本国内にいることと、前年度の収入によって決まるため、1月1日に国内に居りかつ前年度の収入が一定以上ある場合、その年の住民税の支払い義務が発生するのです。

 

因みに負担する金額については、住民税の税率は一律10%です。ただし、課税所得が200万以下の場合、大雑把に5%引いた金額になります。

 

なお知っておくべき点としては、「控除」という存在があるため、年収=課税所得ではないという点です。控除の種類は多岐にわたります。

障害者控除、配偶者控除、社会保険料(年金や健康保険)控除などもあり、年金や保険料を払っている分も引かれます。

大きなものは給与所得控除で年間65万、住民税の場合はこれに加えて基礎控除が38万、合算して103万の控除があるのです。(但し全てそうなるわけでもないです)

年収が上がれば給与控除の額も上がりますし、控除は生命保険料、医療費(の一部)なんかもあります。

 

また住民税は個人単位の税金なので、親の扶養に入っているかどうかは基本的に関係ありません。ただし各種控除(保険料控除など)算定の要因にはなるでしょう。

 

国民年金を強制加入から任意加入に変えられる(国民年金)

海外転出届を出すことで住民票が日本からなくなることで、強制加入から任意加入になります。

海外転出届を出さずに住民票を抜かない場合は、当然国民年金の支払い義務は継続して発生しますが、住民票を抜いたとしても年金を払い続けるオプションがあるというイメージです。

 

国民年金には、老後に毎月一定金額が給付される老齢年金、交通事故などによって障害を負った時に受けれられる障害年金、死亡してしまった時に扶養されていた遺族に支払われる遺族年金、その他いくつかの種類がありますが、個人において重要なのは障害年金でしょう。

 

国民年金に任意加入せずに支払いを止めてしまうと、国民年金の中の障害基礎年金を払っていないことになりますので、事故などで障害が発生したときにでも国からの支援が受けられません。

年金に加入していない時期に事故などが発生した場合、初診条件などの障害基礎年金の受給条件に抵触し年金がもらえないというデメリットがあるため、この点が怖ければ、月額約16,000円ほどの金額を払うことになります。

 

障害年金の受給条件

しかし任意加入していたとしても、障害基礎年金にはその他の受給条件があります。

3分の2条件と呼ばれる免除・猶予期間、直近1年に滞納してないこと、また負傷・疾患を負えば全て対象になるのではなく、初診日から1年半以内の障害認定日など面倒な条件があること、さらには障害等級が1、2級だけであること(これは身障者手帳の分類とは違う)などなど、受給には条件が多くあるのです。

障害等級1級:身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状によって、日常生活ができない程度のもの。 (他人の介助を受けなければ自分の身の回りのことができない程度)

障害等級2級:身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、 日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。 (必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で労働により収入を得ることができない程度)

つまり、極めて重い障害の場合でしか障害年金は適用されないということです。

 

さらに、新たに特別障害給付金制度と言うものもあります。

特別障害給付金制度とは、国民年金に任意加入していなかったことにより、障害基礎年金等を受給していない障害者の方を対象に、福祉的措置として支払われる年金制度です。

対象となる人は、「平成3年3月以前に国民年金任意加入対象であった学生」「昭和61年3月以前に国民年金任意加入対象であった被用者等の配偶者であって、当時、任意加入していなかった期間内に初診日があり、現在、障害基礎年金の1級、2級相当の障害の状態にある方が対象となります。ただし、65歳に達する日の前日までに当該障害状態に該当された方」という条件があります。

つまり今の若い世代は対象にならないことだけ認識しておけば良いでしょう。

 

これらを考えた上で、国民年金に任意ででも入っておくかどう判断しましょう。

 

老後の年金支給額が減る

また老後にお金がもらえる老齢年金(こちらも国民年金の一部)には受給する規則として、25年間以上支払っている必要があるのですが、任意加入にした場合はその期間も受給資格期間に含めることが出来ます。

まぁ、受給額は当然減らされてしまいますが。

 

行政サービスが受けられなくなる(住民票)

住民票がなくなるため、住民票が必要となる手続きが出来なくなります。

例えば日本国内で就業する場合(海外に行くので無いでしょうが)や印鑑証明を取得する場合などが当てはまります。

海外転出届を出す前に、住民票が必要となる諸手続きは済ませておきましょう。

健康保険への加入が出来なくなる(国民健康保険)

これは健康保険料を払わなくてよいという意味ではメリットなのですが、帰国時に加入し直さなければいけない点と、海外療養費の事後請求が使えないという点でデメリットになります。

 

海外療養費の事後請求とは、海外渡航中に発生した治療費などを、日本で治療を受けた場合の治療費に置きなおして、治療費の7割が払い戻される制度です。

ここで注意が必要なのが、「日本で治療を受けた場合の治療費に置きなおして」という点です。

つまり海外で発生した費用そのままではなく、仮に日本で治療したらいくらだったかを計算して支払われるため、海外では高額でも日本では安価な治療で会った場合、わずかしか返金されないという条件がついているということです。

 

しかし健康保険は結構バカにならない金額がかかりますので、親御さんの被扶養者となっており、個人での支払い負担がない場合は、住民票を抜かなくても保険料の大差はないでしょう。

 

つまり保険料を自分で結構な金額を支払っている場合は海外転出届を出すべきですが、扶養に入っているなどで自分で支払いがない場合は、残しておいたほうがメリットがあるでしょう。

 

具体的に負担することとなる金額ですが、健康保険料の計算は非常に複雑です。

保険の種類(医療保険・後期高齢者支援金・介護保険)×賦課割付方式(所得・均等・平等・資産)のマトリクスで決まります。

加入できる保険の種類は恐らく千種類以上ありますので、実際に金額を確認するのであれば自分が加入する保険の条件を確認する必要があります。

所得によって異なる所得割の保険料は都道府県によって違いますが、おおよそ収入の7%~11%くらいと想定しておけばよいでしょう。

なお収入が0円であってもいくらか負担が必要となります。

 

また、住民税と同じく前年度の所得を前提に金額が算定されるので、無収入の状態であっても前年度の収入ベースで計算された金額を負担する必要があります。

 

まとめ

およその知識を理解できたら、あとは役所に直接連絡を取りましょう。ネットで調べるにも限界がある場合もありますので、概要が把握できたらお住まいの役所に確認を取ることが、一番早く、そして確実な方法と言えます。

少しでも参考になれば幸いです。