LINEスコアなど信用スコアによるレンディング事業とは何か解説
- 2019.08.02
- ビジネス

現金大好き日本。
お金は現金じゃなきゃ信用できない!
そんな人が大勢いた日本ですが、「LINE Pay」「Origami Pay」「PayPay」などのQRコード決済企業の努力により、日本においてもようやくキャッシュレス決済の文化が若い世代を中心に広まりはじめました。
しかし企業側は現状で満足しているわけではありません。
QRコード決済事業者の収益化の施策・
信用スコアリングによるレンディング事業。。。
それはどんな事業?
そう思った方や、言葉そのものを初めて聞いた方もいらっしゃるでしょう。
この記事を読むことで、
- 信用スコアリングとは?
- レンディング事業とは?
- どんなメリットがあるの?
- 日本ではどう広まっていくのか?
といった疑問を解消できるでしょう。
信用スコアリングによるレンディング事業の概要
簡単に概要を説明するなら、
消費者向けであれば購買履歴や決済履歴、企業向けであればECサイトでのユーザーからの評価やクラウド会計サービス上の財務情報を基に顧客の「信用度スコア」をAIによって算出し、スコアに応じて融資時の適切な利率や期間が決まるといった、顧客の信用を数値化しその数値によってお金の貸し出しを決める事業のことを言います。
スコア算出に辺り前述の様な購買履歴や決済履歴等の財務情報や行動情報を必要とする為、それらを保持する金融機関・Fintech企業・EC企業等が主な参入プレイヤーとなっています。
まずはじめに融資条件の決定の基となる「AIによる信用スコアリング」についてお話させて頂きます。
AIによる信用スコアリングとは?
AIによる信用スコアリングの領域は日本では未だ立ち上がり段階となりますが、既に中国を初めとする一部の国では一般的なものとなっています。
これらの国では「信用度スコア」はレンディングに限らず、医療機関や恋愛マッチングアプリ等の幅広い場所で使われています。
例としてAlipayを運営するアリババグループの信用スコアリング事業者「芝麻信用」が信用スコア算出に使われている項目を挙げさせて頂きます。
- 身分情報:学歴・職歴・年齢・結婚有無・子供
- 資産情報:預金額、株式・車・住宅の保有状況
- 信用情報:クレジットカードの支払・返済履歴
- 人脈情報:SNSの利用頻度・交流関係
- 行動情報:購買履歴・利用サービス・寄付の有無等
身分、資産、信用情報等は従来の金融機関等に使われる判断基準でしたが、人脈情報や行動情報といった性格・人間性・行動傾向までも分析し、スコアリングに生かしているのが近年のスコアリング事業の特徴となります。
信用スコアリングのメリット
そんな人間のすべてを数値化するようなことなんてけしからん。
人間は数値化できるようなものじゃない。
そんな考えを持っている方も多いでしょう。
しかしこの取組にはちゃんとメリットがあるのです。
スコアリング事業者はスコアに応じて
- 「融資時の金利・期間での優遇」
- 「ホテル・シェアサイクル利用時のデポジットが不要になる」
- 「病院や空港で待ち時間なしの優先レーンで受付が出来る」
等の価値を提供しています。
またアリババの芝麻信用は各国と連携し、スコアが高い顧客はシンガポール・ルクセンブルク・カナダの「ビザ取得時に預金証明等の書類の提出が不要になる」というメリットもある様です。
加えてAirbnbなど個人間のマッチングを行うシェアリングサービスに於いても各ユーザーの信頼度を示すために芝麻信用のスコアを掲載できる様になっている事例も見られます。
また逆に未払いやレンタル品の未返却等の行為を繰り返しスコアの低いユーザーに対しては
- 「ECでの高級品購入を制限する」
- 「列車や飛行機のチケット購入を1年間制限する」
等の対応も行っています。
その結果ユーザーがスコア低下を防ぐ為に未払いスコア低下に繋がる様な不正行為を控える事へのインセンティブが働くというメリットも挙げる事ができます。
不正を働くのを未然に防ぐ効果があるのは、善良な一般市民にとっては安心に繋がります。
AIスコアリングのレンディング事業の課題
拡大が進む信用スコアリングですが、一度破産などでスコアが暴落した際に融資を受けられなくなるだけでなく、通信や公共交通機関の利用も制限を受けてしまい社会復帰が難しくなる事や、スコアが就職や結婚に於いても参照される様になる事で差別や社会格差に繋がるという危惧もあります。
「資産や貯金だけでなく、S
良い点もあれば悪い点もある。
それが現在のスコアリングサービスと言えます。
日本におけるスコアリング事業及びレンディング事業の例
ここからは日本での信用スコアリングの取り組みについて紹介していきます。
日本においては各種資産・行動情報をスコアリング事業者に提供する事への不信感を感じるのではないか?
という点も主な論点として挙げる事が出来ます。
スコアリング事業及びそれに伴うレンディング事業はビックデータ取得やプラットフォーム活性化及び健全化を意図して銀行・決済アプリ等が次なる一手として参入を表明しています。
しかし既に一般レベルに普及しているアメリカや中国とは異なり、日本では未だ市場は立ち上がり始めたばかりのフェーズであり、今後1~2年で浸透し拡大していくのではないかと言われています。
それでは具体的に日本でスコアリング事業・レンディング事業に取り組んでいる企業についてご紹介していきます。
LINEスコア
LINEは2019年6月に年収や雇用形態・社会保障等の15個の質問に答える事で各ユーザーにスコアが割り当てられる「LINE Score」をローンチしました。
スコアの高いユーザーはAirbnb(宿泊)やAnyca(自動車)等のシェアリングサービスで利益を受けられる予定です。
また2019年夏にはLINE Scoreに応じて融資条件が変わる無担保ローンサービス「LINE Pocket Money」がローンチ予定と、着実に事業拡大を進めています。
Yahooスコア
Yahooは19年6月に「Yahooスコア」を発表し、7月1日からサービスを開始しました。
「Yahooスコア」は、
- 「基礎情報データ」
- 「信用データ(ネットオークション(ヤフオク!)での取引実績・レビュー回数・知恵袋での活躍度・飲食店の予約キャンセル率など)」
- 「消費行動データ(Yahoo!カードの利用実績・Yahoo!ウォレットの残高など)」
- 「その他データ(同社が提供する各種サービスの利用頻度など)」
に基づいて「Yahooスコア」を算定し、パートナー企業に提供するというものです。
LINE同様パートナー企業に対してYahooスコアを公開し、パートナー企業はスコアの高いユーザーに対してのみ優良サービスを提供する等の施策実行に繋げる事ができるようになります。
本スコアはあくまでも「許諾が取れた場合にのみ」外部パートナーに提供されるものでしたが、Yahooスコアのリリース時には、SNS上にて「個人情報が【勝手に】外部企業に提供されてしまう」といった「勘違い」の投稿が拡散し、Yahooへの批判が集まりました。
こういった勘違いも現状の課題と言えます。
J.Score(みずほFGとソフトバンクGの共同出資会社)
日本初のAIによる信用スコアリングとそれに基づいたレンディングを行う事業者です。
LINEスコアやYahooスコアとは異なり個人情報に紐づく情報を収集せずに、ユーザーがアプリ上で回答する自己申告制のアンケートを通じて、年収・学歴・勤続年数等の基礎情報やライフスタイルやお金の使い方に関する情報を収集した上でスコアリングを行い、スコアに基づいた融資を行っています。
「自己申告の場合はユーザーが嘘の申告によって高いスコアを獲得し、本来であれば貸し倒れリスクのあるユーザーに融資を実行してしまうのではないか?」
というリスクに対しては、スコアによる信用度検証と合わせて銀行やクレジットカード会社が従来より審査に利用している公的機関による信用情報を参照する事でリスクを回避しています。
ドコモスコアリング・レンディングマネージャー
ドコモの契約者情報に紐づく、契約プラン・携帯料金支払い状況・利用期間・同社コンテンツの利用頻度等に基づき、ユーザーをスコアリングしています。
ユーザーは「レンディングマネージャー」(ドコモがマネーフォワードと連携して開発)という専用アプリを利用して、提携先の金融機関(現在は新生銀行)からスコアに基づいた融資条件でお金を借りる事ができる。
Crowd Cash(クラウドワークス)
日本最大のクラウドワーカー向けプラットフォームを提供するクラウドワークスでは、業務を発注した企業側がワーカーの仕事の質・メッセージの返信速度などを評価し、ワーカーは過去に受注した仕事への評価に基づいて「クラウドスコア」というスコアが付けられます。
そしてクラウドファンディング事業者として有名なCAMPFIREとの連携の下でスコアの高いワーカーに対して、給料の前払いサービスを提供しています。
またクラウドワークスは今後これに加えて、スコアの高いワーカーに対しては、
- 「優先的な仕事紹介」
- 「融資優遇」
- 「取引手数料減額」
といったベネフィットを提供すると発表しています。
三菱UFJ銀行
2018年度春にAI開発のエクサウィザーズへの出資とMUFGのFintech系子会社であるJDDと業務提携を発表しました。
そして同時に中小企業を対象に、財務諸表のみならず日々の入出金データを基に「リアルな返済能力」をスコアリングし、そのスコアに基づく融資を行う構想を発表しました。
日本での普及の課題:「個人情報」取り扱いに対する世間の反応
GoogleやAmazonに代表されるオンラインプラットフォーム・アプリ事業者は無料でサービスを開放する代わりに、「Webサイトやアプリ上の登録情報や行動履歴を基に広告といった各種サービスでマネタイズする」、いわゆる「データ」を活用したビジネスを展開しています。
これらのプラットフォーマー・アプリの台頭により我々の便利で豊かな生活を享受する事ができる様になりましたが、近年はこういったプラットフォーマー・アプリ事業者によるデータ漏洩がきっかけとなり、「データ」を扱う事業者に対して、個人情報取り扱いの観点から多くの批判が集まる様になっています。
そしてこういった潮流の中で、たとえ規約・法律を守ったデータの取り扱いを行っていても、上記Yahooスコアの例における「勘違い」や「何か気持ち悪い」といった理由で「データ利用」に対して厳しいバッシングを行う人々が増えてきているのが現状です。
そして「スコアリング」もまさに「データ」を活用したビジネスにあたり、Yahooスコアで見られた様な「炎上」が発生するリスクを大きく抱えたビジネスと言えます。
その為、今後上記の様な「スコアリングサービス」が日本で普及していく為には規約・法律の遵守に限らず、「どれだけ世間の人々に疑念を抱かせないか?ポジティブなブランドイメージを持ってもらうか?」が非常に重要となっていくのではないかと考えられます。
これらの価値観は民族的な部分もあるため、プライバシーなどを過敏に気にする日本においては、普及には長い時間がかかる可能性も高いかもしれません。
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