ハンドボールのシュートブロックで重要な「枝」の練習方法とコツを解説
- 2019.08.12
- ハンドボール

今回はハンドボールにおけるロングシュートやミドルシュートを防ぐ方法の1つである「シュートブロック」について、基本の考え方から注意点、ポイント、上達のコツについてご紹介していきます。
ハンドボール界隈の専門用語である「枝」。
これはロングシュートに対してディフェンスが上げる腕のことを指します。
イメージとしてはバレーのブロックです。
ロングシュートやミドルシュートを防ぐ手段の一つとして使われるこのブロックですが、突き詰めると注意すべき点が多くかなり奥深く難しい技術です。
細かく解説していく前にそもそも私が何者かを簡単にご紹介させてください。
私は小学4年生からハンドボールを始め大学時代には国体の代表選手に入ったりインカレ(全国大会)で試合に出場し、チームメイトにも恵まれ全国ベスト8まで行った経験がありますが、高校時代は3枚目(ディフェンスの真ん中を守る人)を守っていました。
その時の経験や大学で一流の指導者から受けた内容を踏まえてご紹介していきます。
シュートブロックの役割
ディフェンスの最終的な目的は相手に点を取られないことにありますが、その止め方やシュートブロックが持つ役割にはいくつか種類があります。
その中でも打たれてしまったロングシュートを止める方法は、
・キーパーが止める
・ディフェンスがブロックする
の2つに分けられます。
そしてディフェンスのシュートブロックが持つ役割も大きく2つあり、
・直接シュートをシャットアウト(よく「シャット」と呼ばれます)する
・キーパが取りやすいように打たれるコースを限定する
という考え方があります。
直接シャットアウトするとは以下の動画のようなシーンです。
そしてハンドボールのブロクにおいて、すべてのロングシュートをブロックだけで防ぐことは不可能です。
そこで重要となってくるのが、シュートが打たれるコースを限定し、キーパーが取りやすいようにしてあげるという考え方です。
シュートブロックの基本的な考え方
では「シュートが打たれるコースを限定し、キーパーが取りやすいようにしてあげる」にはどうしたら良いのでしょうか?
まずはじめに意識すべきことは、シューターの利き手側のコース(ハンドボールでは「流し」と言います)はディフェンスが止め、反対のコース(ハンドボールでは「引っぱり」と言います)をキーパーが止めるという役割分担をすることです。
ここからはかんたんな図で解説します。
上記はシュートを打たれるときのシューターのシュートコースとディフェンス、キーパーの位置関係を表しています。
黄色の部分がシューターが打つことができるシュートエリアであり、ここにきたシュートをディフェンスとキーパーで守らなくてはなりません。
ディフェンスとキーパーがそれぞれ自分勝手に自分だけですべての場所を止めようとしても、それはとても困難であり成功率は高くありません。
そこで出てくるのが、ディフェンスとキーパーで役割を分けるという考えです。
ざっくりとした図ですがイメージはこんなカンジw
流しに打ってくるシュートはディフェンスがブロックで止め、引っぱり側をキーパーが止めるという形で、シチュエーションごとに役割をキッチリと分け、やることを限定することでディフェンスの成功率が高まります。
具体的な役割の分け方は相手シューターの力量やディフェンスのシステム、キーパーの能力、ディフェンスの身長、相手との距離や状況など様々な要素によって最適な形が異なります。
そのため、チーム内で一番守れる確率が上がるように役割分担のルールを作っていくことが大切です。
ブロックのポイント
役割分担の細かい点はチームごとに異なりますが、ブロッカーの技術を高めるために重要なポイントは共通していくつかありますので、順番に解説していきます。
基本は利き手側(流し)を守る
ブロッカーは基本的に流し側を守り、キーパーがひっぱりを止めましょう。
理由としてはひっぱりを止める位置でブロックに飛んでも、シューターに躱されて引っ張りに打たれやすいからです。
流しの位置でブロックするほうがこの「躱されやすさ」が断然難しく、シューターに技術が求められるからです。
シューターは腕や身体の構造上、流し側に腕を広げてシュートを打つのは比較的簡単で、流し側にかわされるとそのまま流しにシュートを打つのはカンタンですし、手首を強く返してひっぱり側に打つのも比較的ラクです。
しかしひっぱり側(シューターの体側)へ持っていくのは難しいです。
ディフェンスが流しを守り、シューターに引っ張りを打たせるイメージです。
これが守備側の狙う守り方ですね。
それに対してシューターがブロックを躱して流しに打とうとするパターンです。
ディフェンスは流し側に位置取りするので、シューターがひっぱり側からブロックを避けて流しに打とうとしますが、これはシューターにとっても結構難しいです。
逆にディフェンスがシューターの体側に立ちひっぱりを守ろうとするとどうなるのか。
流しにはそのまま腕を振り抜くだけで良いので、シューターとしては最も打ちやすい形と言えます。
またその状況からひっぱりを打つのもそこまで難しくなく、腕を広げるよにしてブロックを避け、ひっぱりに打てる選手は多くいます。
だからこそ、シューターにとって簡単な流し側を守る意識が大切なのです。
流し側と利き腕の間に入る
流し側を守るのがブロックの基本であることは上記で解説しましたが、ブロックを練習していて最初にぶつかる問題に、自分の立ち位置がシューターの腕と流しのコースの間に入れるかどうかというのがあります。
どのあたりの位置にいればシュータとゴールのコースの間に入れいるのか、その立ち位置の感覚を掴むのにけっこう時間がかかります。
自分がコート上のどの位置で守っているのか、最初のうちはわからなくなることが多々あります。
この感覚を養うには何度も相手の位置とゴールの位置を確認しながら自分の立ち位置を修正する作業が必要で、時にはキーパーに協力してもらいながら自分の位置を修正していき、どんなプレーの状況でも自分が正しい位置を取れるようになる必要があります。
ブロックの面が正面を向くようにする
意外と難しいのが、ブロックの面をシューターの正面に向けるということです。
もし上げた腕の角度が斜めっているとブロックできる面積が狭くなり、シュータに躱される可能性やブロックに当たる可能性が下がります。
速いスピードで動くプレー中はブロック以外にも注意すべきポイントは無数にあるなかで唐突に打たれるロングシュートに反応してブロックに飛ぶと、意外と面が作れていない事が多いですし、自分では気が付かないことも多いです。
そのためこれもキーパーとコミュニケーションを取りながら回数を重ねて修正していきましょう。
腕は最初から上げておき、振り回さない
これは結構難しいのですが、ロングシュートが来ると判断したらなるべく早い段階でブロックの手を上げておくのが望ましいです。(シュートが来ないのに上げっぱなしにしておく必要はありません)
なぜか?
これ私がキーパーによく怒られていたことなのですが、急に手を挙げられたりシュート直前に腕を動かされると、キーパーから見てシューターのボールの位置が急に見えなくなり、とても反応しにくくなるのだそうです。
また急に腕を動かされると今まで潰れていたコースが急に空いたりして、ブロックとキーパーの役割分担が崩れてしまい、キーパーとしては止めにくいようです。
確かに世界レベルの動画を見ても、腕を早めに上げるし左右に振り回したりしていない事がわかります。
両腕の間が開かないように閉める
これはかんたんな話です。
上げた両腕の間が広く空いていると、両腕の間(頭の上)をシュートが通ってしまいます。
そうならないためにはブロッカーは両手の間が開かないようにブロックの腕を上げるのが大切です。
シュートが打たれる直前に飛ぶ
ブロックをする場合のほとんどはロングシュート(ジャンプシュート)に対して行われます。(ステップシュートなどのミドルシュートにも必要ですが)
ロングシュートはシューターがジャンプしている分打点が高いですので、必然的にブロックもジャンプすることが求められます。
しかしディフェンスが早くジャンプしすぎるとシューターのフェイントのカモにされます。
上記の動画のように簡単に抜かれてしまいますので、ブロックで飛ぶのはギリギリまで我慢しましょう。
シュートブロックを上達させるために重要なこと
シュートブロックを上達させるための方法は、ロングシュートでブロックに飛ぶたびにキーパーとコミュニケーションを取り、シチュエーションごとに最適なブロックとキーパーの役割をルール化することです。
この「コミュニケーションを踏まえた役割のルール化」はハンドボールだけではなくあらゆるスポーツ、そして人生においてもとても重要なことです。
シュートブロックはキーパーとの役割分担が重要であることは上記でも解説しましたが、細かい役割には決まった正解がなく、チームの状況や相手によって最も守りやすい形は変わってきます。
そのため、まずは自分たちのチームが一番守りやすい型となるような守り方を試行錯誤しながら見つけていくことが、ディフェンスの練習と言えます。
実践をしながら相互の意見を交わすコミュニケーションをしていくのが何よりも大切な練習方法と言えます。
低身長プレイヤーのディフェンスにおける理想
さてここまではシュートブロックの基本やポイントについて解説してきましたが、そもそもロングシュートに対する守り方として、「ブロック」というのはディフェンスの最終手段と言えます。
身長200cmなどの圧倒的に身長が高く大きい人が4人いるような状況であればロングシュートに対する守り方はブロックだけで良いかもしれません。
しかしそんなチーム状況になるのは日本代表でも難しい。
だいたいが170,180cmくらいの小柄な選手が3枚目(一番真ん中のディフェスの人)や2枚目(真ん中から2番目の人)をやらざる得ないことがほとんどでしょう。
小さい選手のディフェンスの場合、ブロックは長身のロングシューターを守る方法として有効な方法とは言えません。
なぜならブロックで飛んでもブロックの上から打たれてしまうからです。
ではどう守るべきなのか?
ポイントはいくつかありますが、
・牽制に出て早い走り込みをさせない
・前に出てシューターと接触し、強力なシュートを打たせない
という方法が挙げられます。
ディフェンスの本当の理想はパスカットしてしまう&相手にパスキャッチミスをさせてマイボールにするということなのですが、この点についてはまた別途解説したいと思います。
まとめ
今回はシュートブロックについて解説しました。
ロングシュートに対するシュートブロックは身長が高い人が有利なディフェンス方法で、身長が低い人にはどうしても限界があるプレーですが、基本を押さえておくことはステップシュートなどのミドルシュートに対してのブロックするときにも共通して役に立ちます。
またボールの利き手側(流し)を守る考え方は他のディフェンスでも共通する考え方ですので、ぜひ覚えておいてください。
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